祝日法が改正され、2016年8月11日が「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨として、国民の祝日「山の日」として制定されました。当初は6月の山開きのあたりを山の日とする案が有力だったようですが、企業などの反対もあり、夏休みの取りやすい8月に決定したようです。制定経緯にいろいろ賛否両論あったようですが、山が好きな私としては、純粋にうれしい気持ちです。
第1回山の日は、夏休みを利用してソロで北穂高岳にチャレンジしましたので、その様子をレポートします!
北穂高岳挑戦の理由
そもそも、なぜに私が北穂高岳に行こうかと思った理由はふたつあります。
ひとつめの理由は、前回奥穂高岳に登ったときに、涸沢カールから見える北穂高岳の山容が見惚れるほど美しかったので、また涸沢カールに来れる機会があればぜひ北穂高岳に登ってみたい、という気持ちがあったからです。
ふたつめの理由は、昨年、槍ヶ岳のピークを踏むことができて、実はふつふつと湧き始めた欲望があります。そう、「槍」の次は「剱」です。無謀かもしれませんが、いずれ剱岳に登りたい!という欲望に取り付かれてしまいました!
剱岳を登るための訓練として、ある程度の岩稜登攀コースを経験しておきたい、という考えになり、そのための絶好の場所が北アルプス岩稜ルート・グレーディング表で「7D」の北穂高岳(涸沢往復)でした。例えば、昨年の槍ヶ岳槍沢ルートは「8C」、奥穂高岳(涸沢往復)が「7C」です。
◎ 山のグレーディング・・・長野県が2014年に発表した、体力度と技術的難易度の2項目での評価
<体力度> 1~10の10段階で数字が大きくなるほど体力が必要
ちなみに「7」は1~2泊以上、「8」は2~3泊以上が適当という評価
<技術的難易度> A~Eの5段階でEに近づくほど難易度が高い
「C」は「ハシゴ・鎖・雪渓、徒渉があり、ミスは転落・滑落などにつながる場所があるほか、案内標識が不十分な場所がある」という評価
「D」は「厳しい岩稜やガレ場、ハシゴ・鎖・雪渓や徒渉があり、手を使う急な登下降がある。ハシゴ・鎖や標識などは限定的で、転落・滑落などの危険個所が多い」という評価
つまり、北穂高岳に登ることは、私にとって「C」から「D」へ一段階技術レベルを上げる挑戦になります。
別所温泉 石湯
北穂高岳へのアクセスは上高地が玄関になり、まずは涸沢を目指すことになりますが、涸沢は、奥穂高岳登頂以来2度目ですので手順はわかっています。
初日、仙台からマイカーで長野県松本市へ移動の途中、上田市の別所温泉に立ち寄りました。NHK大河ドラマ「真田丸」の影響で人気急上昇の温泉地で、石湯・大師湯・大湯(葵の湯)という由緒のある3つの共同浴場が、地元の方や観光客に親しまれています。
池波正太郎が小説「真田太平記」の中で、手負いの真田幸村18歳がお江という女忍者に出会い、湯けむりの中、いいことになってしまったという別所温泉共同浴場石湯がここです。そんなうまい話あるかいって思いながらも戦国ロマンを感じつつ、いざ出陣!ではなく入浴!
ちなみに石碑の字は池波正太郎直筆とのことです。
泉質は単純硫黄泉とのことですが、実際のお湯は無味無臭、温泉成分も肌からはほぼ感じられず、なんだかちょっと味気ないかな。源泉かけ流しでもないようです。歴史を感じさせる門構えや石造りの浴室の雰囲気はまずまずですが、温泉力としてはう~ん。
こちらは別所温泉共同浴場大湯(葵の湯)です。吉川英治が小説「新平家物語」の中で、木曽義仲が愛人の葵御前と逢瀬したお湯とのことから、葵の湯と呼ばれているそうです。
別所温泉は、国宝・安楽寺八角三重塔や北向観音など寺社仏閣が多く、古代から霊場として発達し、近代では斎藤茂吉、有島武郎、北原白秋、川端康成など多くの文人に愛された温泉地です。
別所温泉街を散歩すれば歴史ロマンに浸ることができると思います。
山の日の涸沢ヒュッテ
2016年8月11日、きょうは記念すべき第1回山の日です。
朝早く上高地入りすると、上高地バスターミナル会場で記念式典の準備が行われていました。皇太子徳仁親王、雅子様、オーストリア、スイスの他、各国関係者、山岳関係者(400~500人)が出席し、山の日をお祝いする式典を午前中に行うとのことです。
私は、上高地のお祭り気分を感じながら、涸沢カールを目指して出発しました。
宿泊予定の涸沢ヒュッテには昼過ぎには苦も無く到着しました。
思いのほか早く着いた要因は、トレーニングで身体が充実していることや、ソロ山行であることかなと思います。
山の日の記念になのか、テント泊の登山者が多いですねぇ。
正面やや左の高いところがまさに明日登る予定の北穂高岳です。
前穂高方面。涸沢カールに来たのは前回と同じ時期ですが、前より雪渓がだいぶ少ないようです。
夜に、涸沢ヒュッテの展望デッキに出てみると、テントの光がカラフルできれい~
そしてこの日はペルセウス座流星群が鑑賞できるという日。
展望デッキに寝転がって夜空を見上げると、ぶわ~っと満天の星が広がっています!
すごい! 視力が悪い私でも、こんなに星の数が多い空は初めてで、息をのむほど。
そして流れ星が観えるたびに、お~っ!と、展望デッキのあちこちで歓声が上がります。
高感度の立派なカメラならテントの光も星空もいい写真が撮れるんだろうなぁ。
ロマンチックな素敵な山の夜でした。私はソロですけどね(^^;
北穂高岳山頂アタック
2016年8月12日、早朝、不要な荷物は涸沢ヒュッテにデポし、北穂へ向けて出発しました。
まず、涸沢小屋右の北穂沢を登っていきます。
はじめはお花畑ですが、どんどん斜度がきつくなり、次第にハイマツ帯や岩場にかわります。
天気がいいので山の空気を味わいながらゆっくり2時間ほど登ると、南陵への取り付きポイントに到着。
ボルダリング気分で岩盤を登ります。
いい感じの斜度の鎖場やハシゴをクリアしていきます。
南陵にとりつくといよいよ岩稜だらけの登りになり、進むにつれ尾根がやせていくので、コース両側が深く切れ落ちていてコース高度感が増していきます。
1時間ほど登り、テント場でもある南陵のテラスに出ます。
奥穂高岳から北穂高岳に続く稜線の迫力がすごいです。ここを歩く人もいるんだよなぁと感心。
少し広いところで動画をとってみました。
南峰直下をまいてゆるやかな岩場を進むと、もうすぐ北峰山頂です。
うしろを振り返ると先ほどの南陵のテラスのテント場が見えます。
着いたー‼ 北穂高岳山頂、やりましたー!
石井スポーツでいただいた山の日手ぬぐいを持って写真撮ってみました。
北穂高岳山頂からの動画はこちら。
北穂高岳山頂東面の直下には北穂高小屋があり、崖にせり出たテラスがとても人気があります。
ここはやはりコーヒータイムですね。天空のテラスから槍ヶ岳を望みながら。
味はともかく、やってることが楽しくてニヤニヤしてしまいます…
しばらくすると、物資輸送のヘリが飛んできましたので動画を撮ってみました。
爆音爆風で飛んでいきました。
天空のテラスからは、涸沢ヒュッテが米粒のように見えます。
槍ヶ岳を示す看板がありました。
北穂高岳から槍ヶ岳を目指すルートは、北アルプスで最も難度の高い縦走路で有名です。大キレットを通過する急峻な岩場の登下降が続く熟達者向きのコースで、北アルプス岩稜ルート・グレーディング表では「10E」の最高難度です。うわ、すごい、何人か行ってますね、どうかご無事で。
北穂高小屋の売店で、恒例のおみやげTシャツ買っちゃいました!
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